電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「電圧・電流・トルクの関係」は等価回路の理解を総点検できる良問テーマです。本記事では、平成24年度 A問題3「誤り探し」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
狙われるのは「比例」と「2乗に比例」の混同。電流は電圧に比例(I∝V)、しかしトルクは電流の2乗(T∝I²∝V²)——電圧半分ならトルクは1/4です。「半分になる」と書いた(4)が誤りです。
平成24年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成24年度 A問題3(要約)
誘導電動機に関する誤りを選ぶ。(1) 二次誘導起電力の周波数・電圧は一次のs倍。(2) 等価回路では二次抵抗を1/s倍にして表現。(3) 等価回路は直列回路なので力率は1にならない。(4) s一定で駆動電圧を半分にすれば電流が半分になり、電動機トルクは半分になる。(5) 同期ワット(二次入力)は二次銅損と電動機出力との和。
出題のポイント:量ごとに「電圧の何乗か」を言えるか
(4)は「電流が半分になり、トルクも半分になる」と書いています。前半は正しく、後半だけが誤り——「比例」と「2乗に比例」の混同を突く典型的な作りです。
| 量 | 電圧に対する次数 | 電圧を1/2にすると | 根拠 |
| 磁束 φ | 1乗(φ∝V/f) | 1/2 | E=4.44fNφ |
| 二次電流 I2 | 1乗 | 1/2 | 滑り一定なら回路定数は不変 |
| トルク T | 2乗 | 1/4 | T∝φI2、両方が V に比例 |
| 出力 P | 2乗 | 1/4 | P=Tω(速度は滑り一定なら不変) |
| 最大トルク Tm | 2乗 | 1/4 | Tm∝V²/(2x2) |
| 最大トルクの滑り sm | 0乗(無関係) | 変わらない | sm=r2/x2 |
この表が頭にあれば、(4)は読んだ瞬間に切れます。電流が1乗でトルクが2乗——この差を突くのが誘導機の誤り探しの定番です。

5つの記述を判定する
| 記述 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 二次誘導起電力の周波数・電圧は一次の s 倍 | 正しい | 相対速度が sns だから |
| (2) | 等価回路では二次抵抗を1/s 倍にして表現 | 正しい | 分母分子を s で割った書き換え(r2/s) |
| (3) | 等価回路は直列回路なので力率は1にならない | 正しい | 漏れリアクタンスがあるので必ず遅れ力率 |
| (4) | 電圧半分で電流半分、トルクも半分 | 誤り ✗ | トルクは2乗に比例するので1/4 |
| (5) | 同期ワット(二次入力)は二次銅損と出力の和 | 正しい | P2=Pc2+Po(黄金比) |
滑り一定なら回路定数は変わらないので、電流は電圧に素直に比例。
「半分」ではなく「1/4」。


r2/s には2つの顔がある
(2)の「二次抵抗を1/s 倍にして表現」を誤りと疑う人がいますが、これは正しい記述です。ただし、この r2/s は2通りの読み方ができます。
| 読み方 | 何を表しているか | 使いどころ |
| ① 周波数の違いを押し込んだ表現 | 実際は「起電力 sE2・抵抗 r2」なのを、分母分子を s で割って「起電力 E2・抵抗 r2/s」に書き換えた | 一次側と同じ周波数の回路として描くため |
| ② 銅損と出力への分解元 | r2/s=r2+r2(1−s)/s。前が二次銅損、後が機械出力に対応する架空の抵抗 | 黄金比 1:(1−s):s を導くため |
①は「なぜそう書くのか」、②は「そう書くと何が見えるか」です。(5)の「同期ワットは二次銅損と出力の和」は、まさに②から出てくる結論——(2)と(5)は同じ式の表と裏だということになります。
右辺第1項=実在する二次抵抗(銅損)、第2項=機械出力に相当する架空の抵抗。
これが黄金比の正体。
(3):力率が1にならない理由
「直列回路だから力率1にならない」——もう少し丁寧に言うと、回路に必ずリアクタンス成分があるからです。
| リアクタンスの出どころ | 何によるか | 消せるか |
| 励磁リアクタンス | 回転磁界を作るための電流 | 消せない(磁界がなければ動かない) |
| 一次漏れリアクタンス | 一次巻線の漏れ磁束 | 小さくできるがゼロにはならない |
| 二次漏れリアクタンス | 二次巻線の漏れ磁束 | 同上 |
誘導電動機の力率は、定格で0.8〜0.9 程度です。空隙があるために励磁電流が大きく(定格の30〜50 %)、これが遅れ成分としてそのまま効いてしまう——誘導電動機が力率改善コンデンサの主な対象になる理由がここにあります。
しかも軽負荷ほど力率が悪くなります。励磁電流は負荷に関係なくほぼ一定なので、負荷電流が小さいと励磁電流の割合が増えるからです。「電動機を過大な容量で選ばない」という省エネの鉄則は、この性質から来ています。
⏱️ 本番での進め方
① 量ごとの次数を先に決める:電流1乗、トルク・出力2乗、sm は無関係。
② 「電流が半分だからトルクも半分」は最頻の罠。2乗を忘れない。
③ (2)の r2/s は正しい表現。疑わない。
④ T∝V² は Y-Δ始動の1/3 と同じ知識——(1/√3)²=1/3。
力率が1にならないことの実務的な帰結
(3)で確認した「誘導電動機の力率は1にならない」——この事実が、電気設備の設計に直接効いてきます。力率改善用コンデンサが必要になるのです。
例:定格出力11 kW・効率87 %・力率85 % の誘導電動機の力率を、95 % まで改善したいとしましょう。
出力ではなく入力で考える。
力率0.85 ⇒ tanθ=0.620。
力率0.95 ⇒ tanθ=0.329。
この差をコンデンサが肩代わりする。
11 kW の電動機に対して3.7 kvar——出力の3分の1ほどの容量が必要になります。誘導電動機が「力率改善の主要な対象」と言われる規模感が、この数字から伝わるはずです。
なぜ誘導電動機の力率がここまで悪いのか——空隙があるために励磁電流が定格の30〜50 % にもなるからです。変圧器の励磁電流が数 % で済むのと対照的で、「回転させるために隙間を開けた代償」だと言えます。
そして軽負荷ほど力率は悪化します。励磁電流は負荷に関係なくほぼ一定なので、負荷電流が小さいほど、全体に占める遅れ成分の割合が増える——「電動機を過大な容量で選ばない」という省エネの鉄則は、この性質から来ています。
💡 覚え方
「電流は1乗、トルクは2乗」——電圧半分なら電流1/2・トルク1/4。r2/s は「周波数を押し込んだ表現」であり「銅損+出力への分解元」でもある。励磁電流が大きいので誘導電動機の力率は0.8〜0.9で、軽負荷ほど悪化する。
⚠️ よくある間違い
「電流が半分だからトルクも半分」と1乗で流してしまうのが本問の罠そのものです。トルクは電流の2乗に比例します。もう一つは(2)の1/s 倍表現を誤りと疑うこと——これは等価回路の約束事として正しい記述です。

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