こんにちは!電験攻略道場です。今回は、電験3種 機械科目の令和4年度上期 問題7に挑戦します。この問題は、各種電動機(誘導機、同期機、直流機)の基本的な特性を横断的に問う、非常に良質な問題です。それぞれの電動機の特徴を正確に理解しているかが試されます。一つずつ丁寧に確認していきましょう!
問題文の確認

【問題文】
電源電圧一定の下、トルク一定の負荷を負って回転している各種電動機の性質に関する記述として、正しいものと誤りのものの組み合わせとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
- (ア) 巻線形誘導電動機の二次抵抗を大きくすると、滑りは増加する
- (イ) 力率1.0で運転している同期電動機の界磁電流を小さくすると、電機子電流の位相は電源電圧に対し、進みとなる
- (ウ) 他励直流電動機の界磁電流を大きくすると、回転速度は上昇する
- (エ) かご形誘導電動機の電源周波数を高くすると励磁電流は増加する
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 誤り | 誤り | 正しい | 正しい |
| (2) | 正しい | 正しい | 誤り | 誤り |
| (3) | 誤り | 正しい | 正しい | 正しい |
| (4) | 正しい | 誤り | 誤り | 正しい |
| (5) | 正しい | 誤り | 誤り | 誤り |
4つの選択肢(ア)〜(エ)が、それぞれ異なる種類の電動機に関する記述になっています。これらの正誤を一つずつ判断し、正しい組み合わせを選び出す必要があります。一見すると複雑に見えますが、それぞれの電動機の基本公式や特性曲線を思い出せば、必ず解ける問題です。
(ア) 巻線形誘導電動機の特性 ✅ 正しい

【スライド内容】
巻線形誘導電動機のトルクと滑りの関係式:
$$T \propto \dfrac{V^2}{r_2’/s}$$
- V:電源電圧(一定)
- r₂’:二次抵抗(一次換算値)
- s:滑り
【詳細解説】
まずは(ア)の巻線形誘導電動機です。誘導電動機のトルクの比例式 $$T \propto \frac{V^2}{r_2’/s}$$ という関係を覚えておくと便利です。問題の条件は「電圧Vが一定」で「トルクTも一定」なので、この式の分母である \(r_2’/s\) の値も一定に保たれる必要があります。
ここで、もし分子の二次抵抗 \(r_2’\) を大きくしたらどうなるでしょうか?分数の値を変えないためには、分母の滑り \(s\) も同じように大きくして、比率を保つ必要がありますよね。したがって、「二次抵抗を大きくすると、滑りは増加する」という記述は正しいということになります。
巻線形誘導電動機では、二次側(ローター側)に外部抵抗を接続することができるため、この性質を利用して速度制御を行う「二次抵抗法」が使われます。抵抗を大きくすると滑りが増え、回転速度が下がるわけです。
(イ) 同期電動機の特性(V曲線) ❌ 誤り

【スライド内容】
同期電動機のV曲線(界磁電流と電機子電流の関係):
- 力率1.0の状態(V曲線の最低点)から界磁電流を小さくすると…
- 電機子電流は 遅れ電流 の領域へ移行する
- 問題文の「進みとなる」は誤り ❌
【詳細解説】
次に(イ)の同期電動機です。同期電動機といえば、界磁電流を調整することで力率を変化させられる「V曲線」が非常に重要です。V曲線のグラフを頭に思い浮かべてみましょう。
グラフの横軸が界磁電流、縦軸が電機子電流です。電機子電流が最も小さくなる点が、力率100%(力率1.0)の運転状態です。問題では、この力率1.0の状態から「界磁電流を小さくする」とあります。これはV曲線のグラフで言うと、底の点から左側へ移動することを意味します。この領域は「不足励磁」と呼ばれ、電機子電流は遅れ電流となります。コンデンサとは逆の、リアクトルのような働きをするわけですね。
したがって、「電機子電流の位相は進みとなる」という記述は誤りです。正しくは「遅れとなる」です。
(ウ) 他励直流電動機の特性 ❌ 誤り

【スライド内容】
逆起電力と回転速度の関係:
$$E = K\phi N \Rightarrow N = \dfrac{E}{K\phi}$$
- E:電源電圧(一定)
- K:比例定数
- φ:磁束(≒ 界磁電流に比例)
- N:回転速度
【詳細解説】
続いて(ウ)の他励直流電動機です。直流機の回転速度を考える上で基本となるのが、逆起電力の公式 \(E = K\phi N\) です。これを回転速度 \(N\) について解くと、 $$N = \frac{E}{K\phi}$$ となります。
この式から、回転速度 \(N\) は磁束 \(\phi\) に反比例することが分かります。つまり、界磁電流を大きくすると磁束 \(\phi\) が増加し、その結果、回転速度 \(N\) は低下します。したがって、「回転速度は上昇する」という記述は誤りです。界磁を強くすると、逆に回転は遅くなる、と覚えておきましょう。
この性質を利用した速度制御法が「界磁制御法」です。界磁電流を弱めると(弱め界磁制御)、回転速度が上昇します。電気自動車や電車の速度制御にも応用されている重要な概念です。
(エ) かご形誘導電動機の特性 ❌ 誤り

【スライド内容】
励磁電流と周波数の関係(L形等価回路より):
$$I_0 = \dfrac{V}{X_0} = \dfrac{V}{2\pi f L_0}$$
- V:電源電圧(一定)
- f:電源周波数
- L₀:励磁インダクタンス
【詳細解説】
最後に(エ)のかご形誘導電動機です。励磁電流について問われていますね。誘導電動機のL形等価回路を思い出してください。励磁電流 \(I_0\) は、電源電圧 \(V\) を励磁回路のインピーダンスで割ることで求められます。励磁回路は主にリアクタンス成分 \(X_0\) で構成されているので、 $$I_0 \approx \frac{V}{X_0}$$ と考えられます。
そして、このリアクタンス \(X_0\) は \(2\pi f L_0\) で表されます。\(f\) は電源周波数ですね。つまり、励磁電流の式は $$I_0 = \frac{V}{2\pi f L_0}$$ となります。この式から、電圧 \(V\) が一定のとき、励磁電流 \(I_0\) は周波数 \(f\) に反比例することが分かります。したがって、周波数 \(f\) を高くすると励磁電流 $I_0$ は減少します。「励磁電流は増加する」という記述は誤りです。
正解とまとめ

【最終解答】
| 記号 | 電動機の種類 | 正誤 | 理由のキーワード |
|---|---|---|---|
| (ア) | 巻線形誘導電動機 | ✅ 正しい | T ∝ V²/(r₂’/s)、トルク一定なら r₂’ と s は比例 |
| (イ) | 同期電動機 | ❌ 誤り | V曲線より、不足励磁 → 遅れ電流 |
| (ウ) | 他励直流電動機 | ❌ 誤り | N = E/(Kφ)、界磁電流↑ → N↓ |
| (エ) | かご形誘導電動機 | ❌ 誤り | I₀ = V/(2πfL₀)、周波数↑ → I₀↓ |
正解:(5) ✅
以上の検討から、(ア)のみが正しく、(イ)(ウ)(エ)はすべて誤りであることが分かりました。したがって、正しい組み合わせは選択肢(5)となります。
学習のポイント
- 巻線形誘導電動機:トルク式 $T \propto V^2/(r_2’/s)$ を理解し、二次抵抗と滑りの関係を把握する
- 同期電動機:V曲線を図で覚える。不足励磁→遅れ、過励磁→進み
- 他励直流電動機:$N = E/(K\phi)$ より、界磁電流と回転速度は反比例
- かご形誘導電動機:励磁電流 $I_0 = V/(2\pi f L_0)$ より、周波数と励磁電流は反比例
各種電動機の特性は、基本公式から論理的に導けます。丸暗記ではなく原理の理解が重要です。今回の解説は以上です。お疲れ様でした!また次の問題でお会いしましょう!

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