誘導機26【電験3種 機械】各種回転機の特徴比較とは?平成20年 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成20年度 A問題6 回転機を横並びで比較!特徴の違いはどこ?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「各種回転機の特徴比較」は毎年のように出題される論説の定番テーマです。本記事では、平成20年度 A問題6「誘導機・直流機・同期機の特徴」の穴埋め問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

4つの空欄は、それぞれ「堅固で簡単→かご形」「トルクと励磁を分離→ベクトル制御」「ブラシとペア→整流子」「ブラシレス化→永久磁石」という一対一のキーワード対応で解けます。

目次

平成20年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢

4つの空欄は、それぞれ一意に決まる手がかりを持っています。

電験3種 機械科目 平成20年度 A問題6 問題文(各種回転機の特徴比較とは)
平成20年度 機械科目 A問題6 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成20年度 A問題6(要約)

堅固で構造も簡単な電動機は(ア)誘導電動機である。この電動機は、トルク制御と励磁制御を分離して制御可能な(イ)制御によって、直流電動機とそん色ない速度制御が可能になった。直流電動機は従来ブラシと(ウ)により回転子に電力を供給していた。ブラシレスDCモータは、回転子に(エ)を組み入れて、効率の向上、保守の簡易化が図られたものである。

(1) かご形・ベクトル・整流子・永久磁石 (2) 巻線形・スカラ・スリップリング・銅バー (3) かご形・スカラ・スリップリング・永久磁石 (4) かご形・スカラ・整流子・銅バー (5) 巻線形・ベクトル・整流子・永久磁石

出題のポイント:キーワードが機種を一意に指す

4つの空欄は、それぞれ「その語しかあり得ない」手がかりを持っています。対応表さえあれば、考えずに埋まります

問題文の手がかり指しているものなぜ一意に決まるか
堅固で構造も簡単かご形ブラシもスリップリングもない
トルク制御と励磁制御を分離ベクトル制御スカラ制御は大きさだけで、成分を分離しない
ブラシと◯◯で回転子に電力を供給整流子直流機の部品。スリップリングは別の機械のもの
ブラシレスDCモータの回転子に組み入れる永久磁石給電が要らなくなるからブラシが不要になる
堅固で簡単とかご形誘導電動機、トルクと励磁の分離とベクトル制御、ブラシと整流子、ブラシレスDC回転子と永久磁石を対応させる図
4つの手がかりは、かご形・ベクトル・整流子・永久磁石へ一対一に対応します。

確実な空欄から選択肢を切る

段階根拠残る選択肢
(ウ)=整流子直流機の部品。スリップリングではない(2)(3)が消えて(1)(4)(5)
(ア)=かご形「堅固で構造も簡単」は巻線形には当てはまらない(5)が消えて(1)(4)
(イ)=ベクトル「分離」の一語(1)に確定
答え(ア)かご形/(イ)ベクトル/(ウ)整流子/(エ)永久磁石 ⇒ (1)
一次電流を磁束成分とトルク成分へ分けて独立制御するベクトル制御と、V/f一定で磁束を保つスカラ制御を比較する図
電流成分を分離して独立制御するのがベクトル制御です。
アかご形、イベクトル、ウ整流子、エ永久磁石の4空欄を手がかりとともに示し正解1とする解答図
丈夫・成分分離・ブラシとの組合せ・回転子給電不要から、正解は(1)です。

整流子とスリップリングの決定的な違い

(ウ)は最も間違えやすい空欄です。どちらもブラシと接触する回転部品ですが、役割がまったく違います

整流子スリップリング
切れ目のある円筒(多数の片に分割)連続した輪
役割回転に応じて電流の向きを切り替える電流をそのまま渡すだけ
使う機械直流機巻線形誘導機・同期機の励磁
あるとどうなる巻線内は交流でも外部端子は直流交流のまま外へ出る

整流子は「機械式のインバータ」だと考えると分かりやすくなります。回転子の位置に応じて、自動的に電流の向きを切り替えている——直流機の電機子巻線の中を流れているのは、実は交流なのです。

ブラシレスDCモータは何を置き換えたのか

(エ)の「ブラシレスDCモータ」は、この整流子の役目を電子回路に置き換えた機械です。

ブラシ付き直流機ブラシレスDCモータ
磁石(界磁)固定子(止まっている)回転子(回っている)
巻線(電機子)回転子(回っている)固定子(止まっている)
電流の向きの切替整流子とブラシ(機械的)位置センサとインバータ(電子的)
回転子への給電必要不要(磁石だから)
摩耗部品ブラシ(定期交換)軸受だけ

「回るものを逆にした」のが本質です。磁石を回して巻線を止めれば、回転子に電流を送る必要がなくなる——だからブラシが要らなくなります

そのかわり、電流の向きを切り替える仕事を誰かがやらなければなりません。整流子は「回転子の位置」を機械的に知っていたのですが、ブラシレスDCではセンサで位置を検出してインバータが切り替えます——だから位置検出が必須なのです。

中を流れているのは交流なのに「DC」と呼ぶのも、ブラシ付き直流機と同じ事情です。外から見ると直流で動く電動機に見える——構造としては同期機ですが、使い勝手は直流機という機械です。

⏱️ 本番での進め方
(ウ)=整流子。スリップリングは巻線形誘導機・同期機の部品。
「分離」の一語でベクトル制御。スカラ制御は大きさだけ。
2つ確定すれば正解にたどり着ける構成——全部埋めなくてよい。
ブラシレスDC=機械的整流を電子的整流に置き換えたもの

3つの回転機は、それぞれ何が得意なのか

この問題は誘導機・直流機・同期機を横断しています。それぞれの「持ち味」を整理しておくと、論説問題全般に効きます

誘導機(かご形)直流機同期機
いちばんの長所丈夫・安価・無保守制御が容易(界磁と電機子が独立)速度が正確(同期速度に固定)
いちばんの短所速度制御が難しかったブラシと整流子の保守自力で始動できない
力率遅れ(0.8〜0.9)界磁で調整できる(進みも可)
大容量化可能整流子が限界を作る非常に大きくできる

問題文の「直流電動機とそん色ない速度制御が可能になった」という一文は、誘導機が唯一の短所を克服したという宣言です。丈夫さという長所を保ったまま、制御性という短所が消えた——だから誘導機が産業用の標準になりました

同期機の「速度が正確」という長所は、誘導機では代わりが利きません滑りがある限り、誘導機の速度は負荷で数 % 動くからです。正確な速度が要る用途では、いまも同期機が選ばれます

そして同期機には「力率を調整できる」というもう一つの特技があります。界磁電流を強めれば進み力率で運転でき、系統の力率改善に貢献できる——誘導機が遅れ力率で系統に負担をかけるのと正反対です。同期調相機という機器は、この性質だけを使うために置かれます

ベクトル制御は、何を計算しているのか

(イ)のベクトル制御——「トルク制御と励磁制御を分離」と言われても、実感が湧きにくいかもしれません。何をしているのかを言葉にしてみましょう

直流機では、界磁巻線に流す電流が磁束を決め、電機子巻線に流す電流がトルクを決めます。物理的に別の巻線なので、片方だけを変えることができる——これが直流機の制御しやすさの正体でした。

誘導機には巻線が1組しかありません。同じ電流が磁束も作りトルクも作っているので、「磁束だけを変える」ということができない——これが制御の難しさでした

ベクトル制御は、この1本の電流を「計算上」2つの成分に分解します。磁束を作る向きの成分と、それに直角な(トルクを作る)成分——実際には1本の電流ですが、計算の上では2つの独立した量として扱えるのです。

直流機誘導機+ベクトル制御
磁束を決めるもの界磁電流(実在する)電流の磁束方向成分(計算上の量)
トルクを決めるもの電機子電流(実在する)電流のトルク方向成分(計算上の量)
分離の方法物理的に別の巻線演算による分解
必要なもの回転子の位置(磁束の向き)の情報

「どちらが磁束の向きか」を知らなければ分解できない——だからベクトル制御には磁束の位置を推定する演算が必要になります。マイコンの能力が上がって初めて実用になったのは、この計算をリアルタイムで行う必要があるからです。

結果として、誘導機を「見かけ上の直流機」として扱えるようになりました。問題文の「直流電動機とそん色ない」という表現は、まさにこの意味です。丈夫な機械に、賢い制御を組み合わせる——現代の電動機技術の基本的な方向性が、この一文に凝縮されています

💡 覚え方
「丈夫のかご形・分離のベクトル・直流はブラシ+整流子・ブラシレスは回転子に磁石」整流子は切れ目があって向きを切り替える/スリップリングは連続した輪で渡すだけブラシレスDCは「回るものを逆にして、整流子の役目をインバータに置き換えた」——だから位置検出が要る

⚠️ よくある間違い
(ウ)にスリップリングを選ぶのが最頻の誤りです。スリップリングは巻線形誘導機や同期機の励磁に使う部品で、直流機のものではありません。もう一つは(エ)に「銅バー」——銅バーはかご形回転子の導体であって、ブラシレスDCモータの回転子とは無関係です。

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