
電験3種の機械科目で頻出の「変圧器の等価回路」に関する問題、苦手意識を持っていませんか?「一次側への換算ってどうやるんだっけ?」「複素数の計算が複雑で間違えやすい…」と悩む受験生は少なくありません。
この記事では、電験3種 機械科目 平成30年度 問題15を題材に、変圧器の簡易等価回路を用いたインピーダンスの計算と、一次電圧の求め方をステップバイステップで解説します。
この記事を読むことで、以下のことができるようになります。
- 二次側のインピーダンスを一次側に正しく換算できる
- 簡易等価回路を用いた複素数計算の手順がわかる
- 受験者がハマりやすい「単位変換」や「力率の符号」のミスを防げる
問題文の確認:電験3種 機械 平成30年度 問15

無負荷で一次電圧 6 600 V、二次電圧 200 V の単相変圧器がある。一次巻線抵抗 r₁ = 0.6 Ω、一次巻線漏れリアクタンス x₁ = 3 Ω、二次巻線抵抗 r₂ = 0.5 mΩ、二次巻線漏れリアクタンス x₂ = 3 mΩ である。計算に当たっては、二次側の諸量を一次側に換算した簡易等価回路を用い、励磁回路は無視するものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) この変圧器の一次側に換算したインピーダンスの大きさ [Ω] として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 1.15 (2) 3.60 (3) 6.27 (4) 6.37 (5) 7.40(b) この変圧器の二次側を 200 V に保ち、容量 200 kV·A、力率 0.8(遅れ)の負荷を接続した。このときの一次電圧の値 [V] として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 6 600 (2) 6 700 (3) 6 740 (4) 6 800 (5) 6 840
与えられた条件と簡易等価回路の整理
問題を解く前に、与えられた条件を整理し、等価回路をイメージすることが重要です。

| 記号 | 意味 | 値 |
|---|---|---|
| V₁₀ | 無負荷一次電圧 | 6 600 V |
| V₂ | 無負荷二次電圧 | 200 V |
| r₁ | 一次巻線抵抗 | 0.6 Ω |
| x₁ | 一次巻線漏れリアクタンス | 3 Ω |
| r₂ | 二次巻線抵抗 | 0.5 mΩ = 0.000 5 Ω |
| x₂ | 二次巻線漏れリアクタンス | 3 mΩ = 0.003 Ω |
ここから、巻数比 a を求めます。
また、問題文の指示により「励磁回路は無視」するため、一次側と二次側(一次換算)のインピーダンスが直列につながったシンプルな回路として考えることができます。
解法のカギとなる重要公式

公式1:一次換算インピーダンス(複素数)
公式2:インピーダンスの大きさ
公式3:一次電圧(ベクトル式)
公式4:一次電流(複素数)
簡易等価回路では励磁回路を省略するため、一次電流は負荷電流の一次換算値として直接計算できるのがポイントです。
(a) の解説:一次側に換算したインピーダンスの大きさ
手順1:二次側インピーダンスを一次側に換算する

二次側のインピーダンスを一次側に換算するには、巻数比の2乗(a²)を掛けます。まず、巻数比の2乗を計算します。
次に、二次側の抵抗とリアクタンスに a² を掛けます。ここで、単位が mΩ(ミリオーム)であることに注意し、Ω に変換(÷1000)してから計算します。
二次側抵抗の換算
二次側リアクタンスの換算
手順2:合成インピーダンスの大きさを求める

一次側のインピーダンスと、換算した二次側のインピーダンスを足し合わせて、合成インピーダンス Ż を求めます。
最後に、この複素数インピーダンスの「大きさ」をピタゴラスの定理で求めます。
したがって、最も近い値は (4) 6.37 となります。
(b) の解説:一次電圧の値
手順1:一次電流を複素数で表す

まず、負荷の条件から二次電流 İ₂ を求め、それを一次電流 İ₁ に換算します。負荷容量 S = 200 kV·A = 200 000 V·A、二次電圧 V₂ = 200 V より、二次電流の大きさは以下のようになります。
力率は 0.8(遅れ)なので、cos φ = 0.8、sin φ = 0.6 となります。遅れ力率の場合、電流は電圧より位相が遅れるため、虚部はマイナス(−j)になります。
これを一次側に換算します。電流の換算は、電圧とは逆に巻数比で割る(× 1/a)ことになります。
手順2:一次電圧をベクトル計算で求める

一次電圧 V̇₁ は、二次電圧の一次換算値(aV₂ = 6 600 V)に、インピーダンスによる電圧降下(Ż × İ₁)を足し合わせたものになります。まず、インピーダンス降下を計算します。
これを基準電圧に足し合わせます。
最後に、この一次電圧の大きさを求めます。
したがって、最も近い値は (3) 6 740 となります。
ベクトル図で視覚的に理解する:電圧変動率とは

計算結果をベクトル図で確認してみましょう。基準となる二次電圧の一次換算値 V₂’ = 6 600 V に対して、抵抗降下(約 141.7 V)とリアクタンス降下(約 131.1 V)が加わり、最終的な一次電圧 V₁ ≒ 6 743 V となります。
遅れ力率負荷の場合、一次電圧は二次換算電圧よりも大きくなり、電圧降下が発生していることが視覚的にもわかります。このときの電圧変動率 ε は以下のように求められます。
受験者がハマりやすい4つの落とし穴

落とし穴1:単位変換ミス(mΩ → Ω)
二次巻線抵抗 r₂ = 0.5 mΩ や二次巻線漏れリアクタンス x₂ = 3 mΩ は、そのまま計算に使うと桁が1000倍ずれてしまいます。必ず Ω に変換(÷1000)してから計算してください。
落とし穴2:力率の符号ミス(遅れ力率 → −j)
遅れ力率の場合、電流は電圧より位相が遅れます。複素数で表すと虚部はマイナス(−j)になります。「遅れ」を「進み」と混同して +j にしてしまうミスが多いので注意してください。
落とし穴3:巻数比の向き(電流換算は ÷a)
電圧の換算は ×a、インピーダンスの換算は ×a² ですが、電流の換算は ÷a(巻数比で割る)です。二次電流に巻数比を掛けてしまうミスが多いので注意してください。
落とし穴4:励磁電流の扱い(無視=0とみなす)
「励磁回路は無視する」とは、励磁電流を 0 とみなすことを意味します。一次電流 = 負荷電流の一次換算値として直接計算できます。
まとめ:解答フローと変圧器問題の攻略法

| 問 | 計算ステップ | 結果 |
|---|---|---|
| (a) | 巻数比 a = 6 600 / 200 = 33 | |
| a² = 1 089 | ||
| Ż = 1.144 5 + j6.267 Ω | ||
| Z = √(1.144 5² + 6.267²) ≒ 6.37 Ω | 正解:(4) | |
| (b) | İ₁ = 24.242 − j18.182 A | |
| Ż × İ₁ = 141.692 + j131.096 | ||
| V̇₁ = 6 741.692 + j131.096 V | ||
| V₁ = √(6 741.692² + 131.096²) ≒ 6 740 V | 正解:(3) |

- 等価回路の基本:簡易等価回路では励磁回路を省略し、一次換算インピーダンス Ż = r₁ + jx₁ + a²(r₂ + jx₂) で全体を表す。
- 巻数比の使い方:電圧換算は ×a、電流換算は ÷a、インピーダンス換算は ×a²。
- 電圧変動率の目安:遅れ力率負荷では電圧変動率は正(一次電圧 > 二次換算電圧)。
- 複素数計算の手順:二次電流を複素数で表し(遅れは −j)、一次換算してから V̇₁ = aV₂ + Ż × İ₁ で計算する。
変圧器の等価回路問題は、手順さえ覚えれば確実に得点源になります。単位変換や複素数の符号に注意しながら、過去問で繰り返し練習しましょう!
FAQ(よくある質問)
Q. なぜインピーダンスの換算には巻数比の「2乗」を掛けるのですか?
インピーダンスは電圧と電流の比(Z = V / I)です。一次側に換算する際、電圧は a 倍になり、電流は 1/a 倍になります。したがって、換算後のインピーダンスは (aV) / (I/a) = a² × (V/I) = a²Z となり、巻数比の2乗が掛かることになります。
Q. 簡易等価回路と厳密等価回路の違いは何ですか?
厳密等価回路では、鉄損や励磁電流を表す「励磁回路」を一次巻線と二次巻線の間に配置します。一方、簡易等価回路では計算を簡単にするため、励磁回路を電源側に移動させるか、今回のように完全に無視(省略)して計算します。電験3種では簡易等価回路を用いる問題が頻出です。
Q. 計算途中で四捨五入しても良いですか?
途中で丸めすぎると最終的な答えに誤差が生じる可能性があります。特に複素数の掛け算や2乗の計算では誤差が拡大しやすいため、電卓のメモリー機能を活用し、なるべく小数点以下3〜4桁程度まで保持したまま計算を進めることをおすすめします。
Q. 電圧変動率とは何ですか?この問題との関係は?
電圧変動率とは、無負荷時と負荷時の二次電圧の変化率を表す指標です。今回の問題では二次電圧を 200 V に保った状態での一次電圧を求めており、一次電圧が 6 600 V より大きい 6 740 V になることが電圧変動率が正(約 2.2%)であることを示しています。
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