電験3種の機械科目で頻出のテーマの一つが「変圧器の短絡試験」です。
「短絡試験の測定値から、どうやって漏れリアクタンスを計算すればいいの?」
「電力計の値が何を表しているのか、よくわからない…」
と悩んでいませんか?
この記事では、令和4年度上期 機械科目 問8の過去問を用いて、変圧器の短絡試験から漏れリアクタンスを求める手順を、等価回路とインピーダンス三角形を使って視覚的にわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、短絡試験における各計器(電流計・電圧計・電力計)の役割と、インピーダンス・抵抗・リアクタンスの関係性がスッキリと理解でき、類似問題にも自信を持って解答できるようになります。
電験3種 機械 令和4年度上期 問8 の問題文
まずは、実際に出題された問題文を確認しましょう。

単相変圧器の一次側に電流計,電圧計及び電力計を接続して,短絡試験を行う.二次側を短絡し,一次側に定格周波数の電圧を供給し,電流計が 40 A を示すように一次側の電圧を調整したところ,電圧計は 80 V,電力計は 1 000 W を示した.この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスの値 [Ω] として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
ただし,変圧器の励磁回路のインピーダンスは無視し,電流計,電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする.
(1) 0.63 (2) 1.38 (3) 1.90 (4) 2.00 (5) 2.10
問題の概要と条件整理:何を求めるのか?
問題文から、与えられた条件と求めるべき値を整理します。

【与えられた条件(測定値)】
- 電流計の指示値 \( A = 40 \text{ A} \)
- 電圧計の指示値 \( V = 80 \text{ V} \)
- 電力計の指示値 \( W = 1000 \text{ W} \)
【求めるもの】
一次側からみた漏れリアクタンス \( x \text{ [}\Omega\text{]} \)
【前提条件】
- 励磁回路のインピーダンスは無視する
- 各計器は理想的なものである
- 二次側を短絡した「短絡試験」である
短絡試験の等価回路を理解しよう
計算に入る前に、短絡試験時の変圧器の等価回路がどのようになるかをイメージすることが非常に重要です。

問題文に「励磁回路のインピーダンスは無視」とあるため、変圧器の等価回路は非常にシンプルになります。一次側からみた抵抗(銅損に相当する部分)を \( r \)、漏れリアクタンスを \( x \) とすると、これらが直列に接続された回路として考えることができます。
二次側は短絡されているため、一次側に加えた電圧はすべてこの直列インピーダンスでの電圧降下となります。
解法のカギとなる3つの重要公式
この問題を解くためには、以下の3つの公式を使用します。

公式1:インピーダンス \( Z \text{ [}\Omega\text{]} \)
$$Z = \frac{V}{A}$$(電圧計の値を電流計の値で割る)
公式2:銅損(抵抗損) \( W \text{ [W]} \)
$$W = r \times A^2 \quad \Rightarrow \quad r = \frac{W}{A^2}$$(電力計の値は、抵抗 \( r \) で消費される電力=銅損を表す)
公式3:インピーダンスの関係(直角三角形)
$$Z = \sqrt{r^2 + x^2} \quad \Rightarrow \quad x = \sqrt{Z^2 – r^2}$$(インピーダンス \( Z \)、抵抗 \( r \)、リアクタンス \( x \) は直角三角形の関係にある)
漏れリアクタンスを求める3つのステップ
それでは、整理した公式を使って実際に計算を進めていきましょう。
STEP 1:全体のインピーダンス Z を計算する
まずは、電圧計と電流計の値から、回路全体のインピーダンス \( Z \) を求めます。

短絡試験では二次側が短絡されているため、電圧計が示す値は変圧器全体のインピーダンスによる電圧降下そのものです。
$$Z = \frac{V}{A} = \frac{80 \text{ V}}{40 \text{ A}} = 2 \text{ }\Omega$$これにより、全体のインピーダンスは \( 2 \text{ }\Omega \) であることがわかりました。
STEP 2:電力計の値から抵抗 r を計算する
次に、電力計の値から一次側からみた抵抗 \( r \) を求めます。

電力計が示す値 \( 1000 \text{ W} \) は、回路内の抵抗成分で消費される電力、すなわち銅損(ジュール熱)を表しています。リアクタンス成分では電力は消費されません。
$$W = r \times A^2$$ $$1000 = r \times 40^2$$ $$1000 = r \times 1600$$ $$r = \frac{1000}{1600} = 0.625 \text{ }\Omega$$これにより、抵抗 \( r \) は \( 0.625 \text{ }\Omega \) であることがわかりました。
STEP 3:インピーダンス三角形から漏れリアクタンス x を計算する
最後に、求めた \( Z \) と \( r \) を使って、目的の漏れリアクタンス \( x \) を計算します。

インピーダンス \( Z \)、抵抗 \( r \)、リアクタンス \( x \) は直角三角形の関係(ピタゴラスの定理)にあります。
$$Z^2 = r^2 + x^2$$ $$2^2 = 0.625^2 + x^2$$ $$4 = 0.390625 + x^2$$ $$x^2 = 4 – 0.390625 = 3.609375$$ $$x = \sqrt{3.609375} \approx 1.90 \text{ }\Omega$$計算の結果、漏れリアクタンス \( x \) は約 \( 1.90 \text{ }\Omega \) となります。
正答と計算フローのまとめ
これまでの計算の流れを振り返り、正答を確認しましょう。

【計算フローまとめ】
- \( Z = \dfrac{V}{A} = \dfrac{80}{40} = 2 \text{ }\Omega \)
- \( r = \dfrac{W}{A^2} = \dfrac{1000}{40^2} = 0.625 \text{ }\Omega \)
- \( x = \sqrt{Z^2 – r^2} = \sqrt{2^2 – 0.625^2} \approx 1.90 \text{ }\Omega \)
選択肢を確認すると、(1) 0.63 (2) 1.38 (3) 1.90 (4) 2.00 (5) 2.10
したがって、正答は (3) 1.90 となります。
試験で使える!重要ポイントとよくあるひっかけ
この問題を確実に解くための重要ポイントと、受験者が陥りやすいミスをまとめました。

ポイント1:短絡試験の等価回路
励磁回路を無視できる場合、変圧器は単なる「抵抗 \( r \) とリアクタンス \( x \) の直列回路」として扱えます。
- 電圧計と電流計の値から → インピーダンス \( Z \) が求まる
- 電力計と電流計の値から → 抵抗 \( r \) が求まる
ポイント2:インピーダンス三角形
\( Z^2 = r^2 + x^2 \) の関係を常に意識しましょう。斜辺が \( Z \)、底辺が \( r \)、高さが \( x \) です。
⚠ 注意!よくあるひっかけポイント
最も多い間違いは、STEP 1で求めた \( Z = V/A = 2 \text{ }\Omega \) を、そのまま漏れリアクタンス \( x \) の値だと勘違いしてしまうことです。これをやってしまうと、誤りの選択肢 (4) 2.00 を選んでしまいます。\( V/A \) で求まるのはあくまで「全体のインピーダンス \( Z \)」であり、そこから抵抗成分 \( r \) を差し引く(ベクトル的に)必要があることを忘れないでください。
よくある質問(FAQ)
なぜ短絡試験では励磁回路を無視できるのですか?
短絡試験では、二次側を短絡しているため、一次側に加える電圧は定格電圧の数パーセント(インピーダンス電圧)と非常に低くなります。電圧が低いため、並列に接続されている励磁回路に流れる電流(励磁電流)は極めて小さくなり、主回路の電流に比べて無視できるレベルになるからです。
電力計の値がすべて銅損になるのはなぜですか?
電力計は「有効電力(消費電力)」を測定します。変圧器の等価回路において、有効電力を消費するのは抵抗成分(巻線の抵抗)のみです。リアクタンス成分では電力は消費されません。また、印加電圧が低いため鉄損(コアで発生する損失)も非常に小さく無視できるため、電力計の指示値=銅損(抵抗損)とみなすことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?変圧器の短絡試験の問題は、一見複雑に見えますが、等価回路をシンプルに捉え、3つの基本公式を順番に適用するだけで確実に解くことができます。
- \( Z = V/A \) でインピーダンスを求める
- \( r = W/A^2 \) で抵抗を求める
- \( x = \sqrt{Z^2 – r^2} \) でリアクタンスを求める
この王道パターンをしっかりとマスターして、本番での得点源にしてください!

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